「某、のことが大好きでござるぅぅぅぅぅぅっっっ!!!」

仮にもここは学校の屋上です。



〜愛を叫ぶ男〜



現在、午後4時もいいところ。
恋人同士である幸村とは授業終了から部活開始までのほんの僅かな時間をここで過ごしている。
………だが、ここにきてやることと言えば。


「ユキ……注目の的になるから止めろ!」


幸村がへ愛の告白をする。
昼休みのように膝枕をするのではなく。
2人並んでお昼ねタイムというわけでもなく。





への告白―――ただそれだけなのである。





「なっ!は某の愛を受け取ってはくれぬのでござるか!?」


うるうるとした目と、恐らく見える者には見えるであろう垂れた犬耳と尻尾。
幸村自身は無自覚でやっているのだから、それに断り辛く付き合う身にもなってほしいものである。


「受け取る受け取らない以前の問題だ!!
 それに……ユキ、ここは学校の屋上だ。放課後とはいえ、まだ生徒だって残ってるんだぞ?!」


フェンスから見えるまばらの生徒のほぼ全員が、たち屋上を見ていて。
視線を真下にやれば、ちらほらと窓から上を見上げる視線とぶつかって、はあまりの恥かしさに一気に飛びのいた。
一方の幸村は相変わらずにこにことしたまま、挙句の果てには手を振って「某、頑張るでござるよ〜」とまで言っている。


「ゆっ、ユキ!こっちこい///!!」


流石にこれ以上はヤバイと感じたが幸村を呼ぶ。
呼ばれた幸村はにこにことの方へ駆け寄り――――その勢いで押し倒した。


〜、何でござるか?」


まるで飼い主を押し倒して、のしかかった大型犬。
もう離すもんか、といわんばかりに、抜け出す道は全部塞がれていて、本当に八方塞りの状態。
は大きく溜息1つついて、幸村を抱きしめ顔を見られないようにその耳元で小さく囁く。



「ユキ……大好き…………………愛してる……//////」



2人きりでもなかなか言わないが、外で…しかも誰が聞いてるとも分からない学校の屋上で言ったのだ。
幸村にとって、これほど嬉しい以外のことはない。
―――――そして思わず。


「っ!?っっ!!某も愛しているでござるよっっ!!」


よほどの言葉が嬉しかったのだろう。
を抱きしめる力が一層強くなって、得意の足技も通用しないほど抱きしめられ、危うく窒息寸前にまで陥ってしまったのだ。
それは、運よく(?)やってきた佐助によって大事には至らなかったものの、もしあのままだったら流石にヤバかっただろう。
佐助の小脇に抱えられた幸村は何やら文句を言いまくっていたが、それに介入するべきではないと自身本能で悟っている。


「っていうか、早く帰らなきゃいけないんじゃねぇの?」


未だに小競り合いをしている2人に痺れを切らしつつ問えば、佐助は思い出したように幸村を抱えなおす。
もう少しで抜け出せそうだった幸村だが、佐助にしっかりと抱え直され、半ば諦めた模様。
それでも手足は往生際が悪いらしくじたばたしていたが……


「旦那、おやつ抜きね。」


佐助のこの一言に幸村は相当ショックだったらしく、途端に大人しくなる。
それを確認して、佐助はに背を向け軽く後ろ手で手を振り、一瞬にして姿が消える。
はつい先程まで立っていた幸村の位置に立ち、自分の胸に手を当てる。
少しばかりの寂しさはあるものの、明日もまた幸村に会えるのだから、このくらいはどうもないと思う。


「ま、物思いに耽るほどのことでもないよな。」


気持ちが落ち着いたところで屋上を後にし、玄関へと急ぐ。
珍しく、幸村の好きな団子でも作ってみようかと思いながら―――



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