それは温もりを求めるように…



『シーツにくるまる』



そこは小さな牢獄。
十畳ほどの和室にあるのはベットとトイレに鏡台のみ。
押入れもない簡素な部屋。


―それが今のに与えられた世界。


はこの部屋を出る事を許されない。
まるで少女のような細く白い足首には鎖の付いた枷。
その先はベットの繋がっており、部屋の鍵は外からかけられて空かない。
ベッドの横にある朱塗りの格子窓だけが外の世界を伺える。
時計もなく時間からも隔離された部屋。



『お前は俺のもんだ…ぜってぇ逃がさねぇ』

そう囁いて…白い髪の鬼はをこの牢獄とも言える部屋にを閉じ込めた。



あの日、鬼の傍を離れようとした
そのを見つけた鬼はを捕らえ、全てを奪い閉じ込めた。
そして、何度も…を犯した。


『お前、男だったのか…』


は姉の替え玉として鬼の屋敷にやってきた。
着ていた着物をはぎ、が性別を偽っていたとわかっても鬼はやめなかった。
むしろ、怒りながらも嬉しそうに笑った。


『男なら…なにをしたってはらみゃしねぇよなぁ?』


そう言って何度もの中に熱を吐き出した。
器具を使っての体を弄び、貪るように全てを食らう。
気を失う事も許されずただ声を上げさせられる時間。
合間に囁かれる睦言は甘く…哀しい。


『お前は俺のものだ。ずっとこれからも永遠にな。』


そう言って笑った鬼はどこか暗い眼をしていた。
その日からこの部屋に来るのは鬼だけ…鬼は毎夜を抱いた。
部屋に入ると同時にベットに体を縫い付けられ、貪り食われる。
開放されるのは最後の最後に意識を落とした時。
目覚めれば隣にもう鬼はいない。


「…元親様……」


ベットに横たわりながらは小さく鬼の名を呼ぶ。
でも、今日も鬼の姿はなくあるのは誰かがいた事を示すようなシーツの乱れのみ。
数刻前までを激しく求めた鬼はいない。


「どうして……」


それが哀しくては涙を零す。
閉じ込められ、犯され続けるだけの毎日が哀しい。



「好きって……言ってるのに…」

愛しているから哀しい。



こんな目にあってもは鬼を愛している。
元々、愛していながら自分が男だからと離れようとした。
それが間違いだと今になって気づいたのだけれど…


「何回言えば…あなたは信じてくれるんですか?」


行為の最中に何度も鬼はに言葉を求める。
好きだと愛していると傍にいると誓えと言うくせに鬼は信じない。
だから、こうやって今もを檻に閉じ込めたまま。


「…えぐっ…んっ…元親…さまぁ…」


今日も小さく嗚咽を漏らしながらは泣く。
届かぬ想いに傍にいない寂しさに、こんな事をされて嫌いになれない切なさに泣く。
ただ、鬼を想って泣く。



くるまったシーツからする鬼の残り香だけが、鬼がここにいた証。



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