最初からわかってた事だ。
『俺がアンタのこと好きだと思う?』
初めて会った時から思ってた。
それはやけに確信じみたなんとなくな直感。
「あのさ、佐助さん…」
「ん〜?なに〜?」
恐らくこの人は…
「佐助さんって俺のことかなり嫌いだったでしょ?」
俺を嫌っているのだろうと…
人が良さそうな笑顔に世話焼きな性格。
は『おかんよねぇ〜』なんて笑うけど…とてもそうは見えなかった。
人の良さそうな笑顔はその心を隠す仮面で、やんわり人を拒絶する壁だった。
そして、その笑ってない瞳の奥に自分への微かな敵意を見える。
それが俺にとっての猿飛佐助と言う人だった。
「あら〜?気づいてた?」
「気づかないわけないじゃん。」
「だよねぇ。あんたってむかつくぐらいやけに聡い子だったもんね。」
「…あんたがあからさまだったんだよ。」
ほら、今だってこうやって誤魔化しもしない。
二人っきりになった時の彼は饒舌で酷くわかりやすいがわかりにくい。
こうやって平気でその身の内の一欠けらでも見せる所はある種友好関係なのか。
あの頃の敵意はもう既にないけれど別に仲良くなったとかそう言うのじゃない。
ただ彼の中で俺に敵意を寄せる理由が薄くなったそれだけだ。
「だって、ったら何かあるとだしぃ?」
「幼馴染だからね。」
「だからって、あんな事までしてあげちゃうの?」
「……それは誰に聞いたんだ…」
「さぁ、誰でしょ?」
彼にとって大切なのはほんの数人。
俺が知る限り上司である信玄さんと昔から知っているユキに…恋人のぐらい。
それ以外はある程度親しいと言う程度でいざとなればあっさり切り捨てられる存在。
…ちなみにそれ以下も当然だがある。
「の全ては俺様のものなのにさぁ…早く出会ったってだけで酷いよねぇ。」
そんな彼にとってその一欠けらの大切な人間への執着は酷く深い。
特に"恋人"であるについては傍から見てて薄ら寒いものを感じるくらいだ。
に近づく者は全て邪魔者での瞳に映る自分以外の存在は全て敵。
自由にさせているようでその手の中で飼い殺してる。
一見そうは見えないだけ余計に性質が悪い。
「…今は全部あんたのもんだろ?」
「まぁね。でも、それでも許せないものってあるじゃん。」
今も未来も全て手に入れる気でいるくせに…
過去すら自分のものにしなければ気に食わないこの独占欲。
見つめる瞳に宿る殺意にぞっとするものを感じる。
「…なーんて、許してあげるって。その分のお仕置きは旦那から受けたでしょ?」
「…やっぱ、あれはあんたの入れ知恵か…」
でも、それでもそれが本当に牙を向く事はない。
それは至極簡単な理由…が自分のもののように俺がユキのものだからだ。
骨の髄まで誰かのものだからこそ彼はの傍にいる事を許す。
俺以外のもも…だから、友である事を許される。
「旦那もあれで結構ねぇ…無茶しちゃったでしょ?」
「っ…///」
楽しげに笑う笑顔に見る狂気。
ほんとにやばい奴には好かれたもんだと思う。
それでも俺が傍観してるのはの方も彼を好いているからだ。
じゃなかったら意地でも引き離してる。
「ま、それは置いておいてさ。」
「置かずに捨ててくれ。」
「捨てないv…それはともかく一つ聞くけど…」
昔ほどの悪意は感じない。
でも、好かれているなんて露とも思わない。
「俺がアンタのこと好きだと思う?」
なのに聞いてくる所が最高に根性悪いと思う。
それすらも最初からわかってた事だ。