いつも思うんだが…あいつ――の携帯はどうなってるんだ?



『データフォルダ』



の幼馴染で友人で母親代わりな
その彼女が肌身離さず持ち歩くのは携帯電話。
だが、用途の殆どは電話としての機能ではなく―――


「…この曲…いいな。」


ミュージックプレイヤーとして。


「……今日もいい画像が撮れた。」


カメラとして。


この2つの機能しか働いていないような気がする。(寧ろ電話は10%にも満たないだろう)
そのうちカメラとしての役割はものすご〜く、誰もが考えている以上に働いているだろうと某ツン

デレ王子は思っている。
そしてそれは―――間違ってはいないのだ。


っ!今日は何撮ったんだ?」


特に、が守っているのことに関しては。


「あ、。今日はこんなのがあるよ。」


そう言ってに見せたのは先日偶然見つけた『猫のお昼寝・腹見せ』の画像。
可愛い顔をしてすやすやと眠っているのだが、その寝方は見た瞬間笑えるというくらい変な体勢を

とっているのだ。
見せられたは当然腹を抱えて笑い出し、それがどうやらツボに嵌ったらしくずっと笑っている。


に何を見せたん?僕にも見せてぇなv」


笑い転げるの背後から出てきたクリス。
それにも気付かずは笑っており、は構うことなくクリスにも普通に見せたのだ。


「ほら。可愛いと思わないか?」


「うんうん♪の言うとおり、可愛えぇと思うよ。
 けどなぁ…これって可愛いより笑える言うた方がおうとるような気がするわぁ〜」


繁々と画像を見たクリスはそう答え、いつものニコニコ笑顔を浮かべる。
は「そうか?」と返事をしながら、カチャカチャとやった後。


「こんなものもあるよ。」


と、クリスたちに向けられた画面の中には――


「うわぁ〜、すごく綺麗やわぁ〜v」


「オレにも!…って、っ!なんつー写真撮ってんだよ!」


「俺?って!?いつの間に撮ってたんだよ?!
 つーか2人ともこれ以上見るなっ!///」


被写体は別になんともないのだが、画面の中のはネグリジェのように長いパジャマにマイクロス

パッツを穿いた状態のモノ。
捲れ上がったパジャマから覗く臍と太腿は男を惑わす程のものがヒシヒシと伝わってくる。
いつの間にかやってきていた針谷も一緒に覗き、顔を真っ赤にさせて叫ぶほどである。
…これが王子に知られようものなら、確実にはこの場もしくは帰り道でお仕置きだろう。
それがないのは、今この教室にツンデレ王子=瑛がいないからである。


「もうちょっと見せてくれたってえぇんとちゃうん〜?」


「だ〜っ!これ以上はダメ!!がいいって言っても、俺がダメなの!!」


は携帯の前に立って全身で隠す。
それを押しのけてまで見ようとする2人ではないが、がここまで無防備になっている姿は是非と

も目に焼き付けておきたいもの。
それ故に2人(特にクリス)はと取っ組み合いの状態になっているのだ。
(まぁクリスの方が10cm以上も身長があるため、あまり隠し通しきれていないのだが。)
だが、それも空しく……


「何やってるんだ……」


君もクリス君もいい加減にしたまえ!」


氷上と珍しく一緒になっているらしい瑛がやってきた。
そしてそのまま瑛はを止めようと、氷上はクリスとの間に入り―――の携帯の画像が目に

入った。


「な、ななな…なんっ、なんて写真をっっ!!///」


「…………、ちょっと来い」


氷上は真っ赤になってしどろもどろに言った後勢いよく後退し、瑛はに耳打ちしてそのまま腕を

引いて教室を出て行く。
腕を引いて、というよりは引きずられてといったほうが正しいだろうか。
その光景をただ見守る3人(正しくはとクリスの2人)は結構薄情者ではないだろうかと思う




と瑛は何処に行くんだ?」


「あ〜は気にせん方がえぇよ。2人は絆を深めに行ったんやからな〜」


「じゃねぇだろ!………あー…、アイツも苦労するよなぁ…」


「??こーのしん、どういうことなんだ?」


連れ去っていった意味のわかっていない
今説明してもいいのだが、その勇気もない(というかクリスに丸め込まれる)針谷には到底無理な

話だった。
三者三様の面持ちで帰ってきた瑛とを見れば、は顔を真っ赤にして足はふらふらしているの対

し、瑛は非常に機嫌よく女子の相手をしている。
そんなを慰めるためにはメールで瑛の画像を送った。


「これ以上のは、…誰にもあげる気はないよ?」


そう1人ごちて、データフォルダの一番下のファイルを開く。
そこにはがホントに偶然遭遇して撮った多数の画像たち。
でも、それは同時に相手の切り札とも言うべきものばかりが揃っている。
はそれを知らないが、1つだけタイトルが数字のものを開く。


は…笑ってるのが一番いいんだ…」


そこに映るのは花束を腕一杯に抱えてカメラ目線で幸せに微笑む
しかも今よりまだ幼い顔つきで、少し前の写真であることが見てとれる。


「これは…これだけは、誰にも……渡さない。」


―――――私だけに向けられた顔だから。



...end

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