右には腹黒のマッドサイエンティスト。
左には過保護な幼馴染。
………どれだけ声を掛けても返事がなかった理由がコレかよ!
『川の字』
「つーか、一緒になって寝るなよ…」
オレはベッドの上の状況を見て溜息をつく。
を真ん中にして、そのを守るかのように2人が寄り添って寝てるんだぞ?
しかも右に位置する弁慶ってヤローは、事ある毎にを狙ってる超危険で追い払うには厄介な男だ。
そんなヤツをは慕うから、オレの方が毎回ハラハラしてなきゃならないんだぞ?!
「ん……っ、…瑛……」
突然聞こえた声に慌てて目を向ければ、ごろんと弁慶に向き直る。
俺の名前を呼ぶのはいいが、そいつはオレじゃない!!
――早く目を覚ませ!!
「って…それよりいつまで寝てるんだ?」
内心いつ襲われるんじゃないかとヒヤヒヤしているオレを余所に、未だ寝息を立てて寝てる3人。
これ以上待つのも埒が明かないし、オレはを起こすことにした。
「おい…、…、起きろ。」
「んー…ぅ…」
「……………まぁこんなんで起きるとは思ってないけど…」
軽く揺さぶりをかけて起こしてはみたが、それでコイツが起きるわけはなくちょっと身じろぎをしただけ。
なんつーか……2人きりならイタズラできるんだが…あぁ、イタズラしてやればいいのか。
「ま、2人には悪いが起きないが悪いってことで。」
オレはそのまま手を首筋にやって何度もなぞる。
その行為がくすぐったいんだろう、は逃げるようにもぞもぞと動き、時折うっすらと目を開けてはいるんだ
が、完全に起きる気配はまだない。
それに気を良くしたオレは、もう片方の手で脇腹をくすぐってみた。
「っ、ん…ゃだ…ぁ……てば…」
「これでも起きないなんて…ってやっぱ神経図太いんだな。」
「ほんとに…らめぇ………んっ…やら…ってばぁ…」
の身体がオレの手から逃げるように動く。
それを許すわけじゃないが、時折オレの名前を呼ぶってことは、夢の中でもオレに同じ事されてるって思って
もいいんだろうか?
……なんか妙に嬉しいもんだ///
「もうやだぁ…って………あれ…え?…瑛…?……え、えぇ?!」
「おはよ、。起きるの遅ぇっての。」
あまりのくすぐったさに完全に起きたらしい。
驚くの額にデコピンを1つかまし、さらに唇にキスしてやった。
ま、軽いお仕置きとその後にいいもの見せてもらったお礼みたいなもんだな。
「ゴメン、って何でここにいるんだよ?
確か今日って何も約束なんてしてなかったよな?」
「ん?…あぁ、じいさんの方が予定あってさ。店、休みになったからバイトも休みになったんだ。
それでお前の顔見に来たってワケ。
………………まぁ来てみて強ち間違いじゃなかったな。」
もう少しでこのマッドサイエンティストに食われるところだったし。
ふと目線を外してみたら、コイツの手がいつの間にかの身体に被さってて、引き寄せれば抱きしめられる状態になってやがる。
「それより早くこっちに来いよ。」
その事にむっとしたオレはをベッドから離し、さっきまで握られてた手をとってキスして指を舐める。
それだけで顔を赤らめて潤んだ目を向けられて――
――でも、ここではヤってやんねぇ。
今日はとびっきり焦らしてやるよ………オレの部屋でたっぷりとな。
たちが着替えて家を出て行った後。
と一緒に寝ていた2人が目を開ける。
「まさか、ここまで見せ付けられるなんて…ちょっと予想外でしたね。」
「それだけ瑛がを愛しているということだろう。」
「僕もそれは認めますが……叔父としては悲しいですねぇ…」
「…頼ってもらえなくてか?」
「そうですね。」
弁慶のそれは自分の子を嫁に出したような気分なのだろう。
彼はまだ結婚もしてないし、自分の子もいない(元々結婚する気さえない)のだが、は弁慶にとって目にいれても痛くない子供だったのだろう。
かくいうも心境は弁慶とほぼ同じだったりする。
はが弁慶と出会う前から面倒を見てきた人なのだから。
「では、今日は久しぶりにヒノエと遊ぶとしましょうか。」
「もいなくなってしまったことだしな。」
「あぁ…景時や譲くんたちも呼んで盛大にやりましょうかv」
「それはいいな。では私は皆の分の料理でも」
「いえ、それは構いません。今日くらい出前を取りましょうね。」
の頭上には『?』が飛んでいたが、を守り幸せを一番に願うにとって、瑛は必要不可欠であることを思い出す。
―――――まぁ、…そのの運命がこのあと大変なのだが。
「なら私は皆に電話をかけてくる。」
「えぇ、よろしくお願いします。」
そうして、約2時間後には八葉と望美と朔、そしてが集まり、大量注文された料理をつついていた。
その中には若干機嫌の悪い弁慶が黒いオーラを振りまきながらヒノエに突っかかっており、被害者であるヒノエは早く帰って来いと切実に思っていたことを記しておこう。
...end