ついてない。
つうか、不運だろう。



Danger signal.





「……(ぶすっ)」


本日のは…
至極本気でマジに不機嫌だった。


…頼むからガン付けやめてくれないか?」
「素の顔です。」
『(嘘だ)』


目は座って柄は悪い。
いつもローテンションでやる気のないだが、今は苛立ちが目に見える。
視線で攻撃できたら即傷害罪なみの凶悪な視線。
がそこまで不機嫌な理由は…



「運営委員なんだからミーティング参加は仕方ないだろ?」
「…なりたくてなったんじゃないっての。」

…これであった。



あのくじの後、結局は運営委員に…
女子の冷たい視線にぜひ辞退したかったが、それも適わなかった。(また騒ぎになるから)
しかも、唯一の男運営委員としてテニス部担当にまわされる始末。(ミーハー性がないから)
ただでさえ勘弁して欲しい中でこれだ。


、今日ミーティングが…』
『はっ?ヤダ。行きたくない。(面倒だし)』
『運営委員なんだからちゃんとしなさい!』
『うわっ!』


電話で教師に言われた瞬間に拒否。
だが、当然許される訳がなくテニス部員の家への襲撃。
その後は会場へ強制連行。


「なんでせっかくの夏休みにこんな事を…」


しかも、今現在夏休み終盤一般生徒はフリー。
別に用事があるわけじゃないが、何が楽しくて実行委員会なのか…
の気分は悪くなるばかり。


「うるさいなぁ…少しは黙るとか出来ないの?」
「だから、お前のがうるさいっての。」


そして、それに拍車をかける男…伊武。
あのくじの際にしっかりと口喧嘩に発展した彼らはそれ以来こうして事がある事に衝突する。
まぁ、主に突っかかるのが伊武ではひたすらうるさがっているだけなのだがそうなると長い。
かと言って止めようとすれば…



「2人ともおちつ…「「黙れ鬼太郎」」「狽ネっ!?」

これである。



ばっちり揃ったきっつい一言。
視線を相手に向ける事無く言われた言葉は相手のウィークポイントを的確に付く。
ちなみに今の犠牲者は神尾…彼は止めようと手を出した姿のまま固まってしまった。
後、他には「はげ」「チビ」「影が薄い」などバリエーションは多彩であるが…それらがきっちりステレオで言われている所が仲がいいのか悪いのか。
きっと当の本人たちは後者を熱烈に支援する事だろう。


「ちょっと神尾が沈んだじゃん…うっとおしい…」
「はっ?お前だって言ったくせに自分を棚に上げんな。」
「ほんと…って生意気だよね…潰そう…」
「同い年だろうがてめぇ。後、潰される前に叩き潰す。」
「へ〜…言うね。」
「お、おい、2人とも…(汗)」


今日はの機嫌がいつも異常に悪いからだろうか。
普段ならただの延々とした言い合いで終るのだが、今日は一発触発の雰囲気。
今にも手が出そうな2人に周りが慌て始めるが当の2人はどんどん剣呑になっていく。
慌てて橘が止めようとするがそれより動いた者がいた。


「2人とも早く話し合わないと帰るの遅くなるよぉ?」
…」


静かになんでもないように告げられる言葉。
言っている本人…の表情も特になにかを考えている感じはない。
だが、誰もが黙り込んだ。


「おにーさん〜オレは早く帰りたいなぁ〜。」
「……いや、俺に言われても。」
「伊武〜、いつになったら話し合いはまるのかなぁ〜?」
「……今から?」

なぜなら…



「って言うか、オレなんでうんえー委員でもないのにここにいるんだろうねぇ。」

ある意味一番の被害者だからだ。



は運営委員では決してない。
くじもはずれたしここに来る理由はまったくない。
ならばなぜここに来ているかと言えば…


「ケンカのちゅーさいってしょーがくせいでもないのにせんせーもひどいよねぇ。」


伊武とのケンカのせいである。
実はこのいつまでも終らない口論を止めれる唯一の存在。
それがだったりする。


「おにーさんもそうおもうよねぇ?」
「悪かったからわざとひらがなで話すのやめろ。」
「あっ、わかった?」
「わかるって…って語尾延ばすくせあるけど…やりすぎ…」
「やっぱ?ま、とにかくミーティングしなや。」
「だな…早く帰りたいし。」
「さっさと決めたいしね…」


マイペースと言えばいいのかどうなのか。
の存在は2人の毒気を抜く効果を出すらしく、気が付けば険悪な雰囲気が和らぐ。

そして、(恐らく無意識)の誘導によりミーティングを開始する方向へ…


…お前って凄いよな。(汗)」
「?なにが?あ、オレ後ろにいるわ。」


感心したような疲れたような神尾に一瞥しては後ろの方へ。
どうやら一応運営委員でもテニス部員でもないのでミーティングには参加しない方針らしい。
別に参加してもいいのにと彼らは思ったがなりの線引きなのだろう。
とにかくこうしてミーティングは始まったのだった。


「では、我々不動峰の出し物は『お化け屋敷』とする。」


そして、出し物は意外に早く終った。
発案者は伊武で途中でまたと言い合いになりそうになったが、によりそれは回避。
何はともあれ不動峰は"お化け屋敷"をする事になった。


「ほんじゃ、委員長に言ってくるわ。」
「おにーさん、がんばっ。」
「…なにをだよ。」


の良くわからない激励を受け部屋を出る
一応、運営委員としての責務を果たすべく運営委員長のいる会議室へ向かう。
…見かけ不良のくせに意外に真面目な男である。


「不動峰テニス部でーす。 模擬店内容決定しました〜。」


そう言いながら会議室を空ければ人影が1つ。
それは運営委員長兼出資者兼氷帝テニス部部長の跡部景吾の姿。
は顔を確認するとそのまま近くに寄っていく。


「不動峰の模擬店は『お化け屋敷』だ。」
「……」
「で、必要物品は次のミーティングで……聞いてんのかあんた?」


そのまま報告に入るのだがなにか妙に様子がおかしい。
思わず訝しげに眉を寄せつつ跡部を見れば、跡部はどこか呆けた顔でを見詰めている。
男にそんな風に見詰められ嬉しくないが、暑さにやられたかと(冷房完備だが)は無視しようと思ったのだが…
それは次の瞬間、跡部の言葉によって不可能になる。


「お前…なかなか奇麗な顔してるじゃねぇか。」
「……はっ?」


言われた言葉理解不能。
思わず半分固まりつつ跡部を見れば微妙に熱っぽい目でを見ている。
鳥肌と共にこの間とは別の種類の危険信号がの脳裏に走る。
…こいつは危険だと!(そして、多分正解)



「名前…なんて言うんだ?」
「っ!?男ナンパすんじゃねぇよ!ぼけえぇぇ!」

唸る右拳が跡部の左頬を捉えたのだった。



不動峰運営委員、
初日に委員長(同性)にナンパされる。


「いやだ!運営委員なんてやってられるか!やめる!」
「あ〜、無理みたいだよ。お兄さん不動峰うんえー委員からうんえー委員補佐にレベルアップだって。」
「なんでだよ!」
「知らないよ。むしろ、それで繰上げでオレがうんえー委員だってさ…なんか納得いかない。」
「…俺はもっと前から納得いかねぇよ。」


危険信号はMaxなのは…言うまでもない。
この日、は自分の貞操が心配項目に加わった。


不幸なのはどっち?

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