いくら、私のことを忘れたからっていってもね。
あの一言は結構キツかったのよ?



『Memory loss』



とある週末。
私は珍しく1人で街へお買物をしてたら、こじゅぱぱから電話がかかったの。
まさにぃもデート中だし、何の用事だろって不思議に思って出てみたら――



様!今すぐ中央病院に来て下さい!!』



だけ言って、一方的に電話が切れちゃった。
私は切れた電話を持ったまま暫く画面とにらめっこしてたんだけど、それじゃ埒も明かないし。
……まぁ行ってみましょうか。




















それから20分後。
病院に着いた私はこじゅぱぱの携帯に電話をかけてみた。
だって誰が運ばれたかなんて言わなかったんだもん!

「あ、こじゅぱぱ?私今病院の入口にいるんだけど。」

『あぁ。でしたらそのまま4階に上がってきてください。
 そこのナースステーション前で待っていますから。』

私ははーい、と返事をして近くのエレベーターで4階に上がる。
扉が開いた右斜め前にナースステーションがあって、こじゅぱぱはその隅に立ってた。

様、こちらへ。」

案内されたのは、そこからちょっと先にある部屋。
どうやら個室っぽくて、『父さんが倒れたのかしら?』と最初は思ったんだけど。

「なんで…まさにぃが…?」

部屋の扉の横にある名前は【伊達政宗】だった。





静かに開かれた扉の先には、ベッドに横たわるまさにぃ。
その横には点滴が流れてて、頭に痛々しいほどの包帯が巻かれてる。
規則正しくピッ、ピッとがする方を見れば、ワケの分からない機械があって、そこから伸びる線はまさにぃの身体の至るところについてるみたい。
私は恐る恐る近づいて、震える手でまさにぃの手を握る。
それでも何の反応も示さないから、余計にぎゅっと握ったけど、やっぱり反応はなかった。

「………まだ、目覚まさないんだな。」

背後から呟くように聞こえた声に振り向けば、腕を押さえて入口に立ってる
そのまま私の横まで来て、私の手の上にそっと片手を置く。

「…。どういうことか説明してくれる?」

それに小さく頷いて、はここに至るまでの経緯を語りだした。
2人はデパートの催事に行った帰り、階段を下りようとしたらの肩と誰かの肩がぶつかって、がバランスを崩しちゃったんだって。
それに気付いたまさにぃが慌てての腕を引っ張ったらしいんだけど、その拍子にまさにぃが階段から落ちたらしいの。
結局引っ張られたも受身を失敗して、後ろに尻もちをついて斜めに腰を打ったってことで、今しがたまで診察を受けてたらしい。


「…………ぅ……」


が話し終えるのと同じくらいに小さなうめき声がして、握っていた手にぴくりと刺激が来た。
はっとして私がまさにぃを見ると、ゆっくりと目が開いていくところで。

「政宗様っ!」

「まさっ…よかったぁ…このまま気がつかなかったらどうしようかと思ったぜ…?」

「もう、まさにぃってば心配させないでよね〜?」

私たちがほっとしたのも束の間。
まさにぃは私をじっと見た後、ふいと目線を外して言ったの。



「小十郎、…。コイツ誰だ?」



それはそれは真剣な顔で。
言われた私は一瞬頭の中『え?』って状態で、でも確かなのは『これが記憶喪失…?』ってこと。
妙に冷えた私の頭は、さっきのまさにぃの言葉だけが反芻される。

その間にこじゅぱぱは看護師さんを呼んでおいたみたいで、いつの間にか視界には医者とまさにぃが何かやりとりしてた。
そして医者がこじゅぱぱの前に立って「一時的なものだと思いますが…」って話してる。
どうやらまさにぃが忘れたのは私のことだけみたい。
だって、父さんたち家族やこじゅぱぱや恋人ののこと、隣に住んでる前田さんやのこともちゃんと覚えてるの。
大学のこと―佐助さんや元親さん、元就さん…それに慧や翠や香奈たちのこともちゃんと覚えてる。





――そう。
まさにぃの中から消えたのは私だけ。





「ゴメン…。私、お邪魔虫みたいだから席外すね〜」

唯一言えた精一杯の言葉。
それだけを言って、私は急いで病院を後にした。
途中、こじゅぱぱとに『私を妹だって言わないで』ってメールして、行き着いたのは今住んでる家。
見上げたらなんか無性に泣きたくなって、自分の部屋に駆けこんで久しぶりに(母さんの葬式以来ね!)大泣きしたわ。
………それこそこじゅぱぱが帰ってくるまで。

「ねぇ、今後のことなんだけど。」

リビングでいつもより遅い夕食をとりながら呟けば、こじゅぱぱははっとして顔を上げる。

「私、まさにぃの記憶戻るまで帰らないことにしようかと思うの。」

「それは……それは何があっても許可は出来ません!」

「何でよ?あ、家のことね?それなら大丈夫v
 香奈や真由たち、後ママにも言って皆の家ローテーションしてくるから。
 あとさぁ、まさにぃには私のことてきとーに説明してあるんでしょ?」

「そういう意味ではなく…あ?え、あ…政宗様の遠い親戚筋、とだけ御話申し上げて―」

「それだと怪しまれるじゃない!他に言い分けなかったの?
 まぁ過ぎ去ったことを言ってもしょうがないし………ごちそうさま。私準備あるから部屋に戻るね?」

私はドアの方を向いたまま、努めて明るく振舞う。
自分でも無理してるって分かってる。……でも、ぼろが出るより全然いいから。

様っ、まだ御話は終わって」

「そうだ!次に会ったら、私のことは「様」なんて呼ばないでよ?
 遠い親戚なんだから……そうね、昔の苗字「砂城」で呼んでちょーだいv」

言いたい事は言ったしさっさと部屋に戻って、最低限の荷物纏めなくっちゃ!
こじゅぱぱの話…終わってなくても、私が終わってるからいいの。
それに…あ、今日は香奈の家にあがらせてもらお〜っと♪
あくまでも表面上はいつもの私でいなくちゃね?



ってことで、私は今香奈の家にお邪魔中v
あれからすぐ電話して掻い摘んで話したら即OK。
途中で真由と亜由も来て、色々わき道それながら話してたから、今日は皆でお泊りになっちゃった。

でも話してると気がラクだった。
何かさ…こう、やっと安心できたって感じ。
けど気を抜いたら泣いちゃうから、常に何かに没頭してないとダメね。
そんなときはやっぱり仕事だわ!うん、明日からフルにしてシフトいっぱい入れよ〜っと♪

「…、立ち直ったみたいだな。」

「けど、まだ気は抜けない。」

「そうなのです〜。だって本当のちゃんは、もっと自分押し出しで〜。だから、仕事の間はあたしが見張るのです〜」

お尻が痛いなと思ってたら、さぁお仕事頑張るです〜と真由が言いながら、考え事をしてる私を引きずってく。
私は咄嗟に声を掛けて止まってもらい、軽く文句を言いながら立ち上がる。
でもこれは感謝すべき……かな。

「じゃあ近くまで送るから、オレ車吹かしに行って来る。」

「あ、私もいいか?」

「全然構わねぇぜ?つか寧ろ一緒に乗っててくれ…」

「「む〜…でも、真由宜しくね〜」」

そして私たちは真由の車に乗って、ママの店の近くで降ろしてもらった。
そこからちょっと歩いて、店の中に入ろうかというときに運悪く―――まさにぃと再会した。

「あ……」

「ん?…やっと来たか。
 今日家に帰って話をしようにもお前はいねぇし、小十郎に聞いたらここに行けばいいと教えてくれたしな。
 つーかよ、ここナイトクラブだろ?仮にもオレの親族ならなんでこんなとこで働く必要があんだ?
 金の必要性なんて全然ないだろうが。
 それとも、夜の相手が欲しくてやってんのか?
 いずれにしろ詳しく聞かせてもらわねぇといけねぇし……ほら行くぜ?」

「っっ!!」

ちゃんっ!……伊達政宗、サイテーですっ!!」

掴まれた腕を思いっきり振りほどいて私は店の中に走った。
そのままロッカールームまで一気に突っ切って、自分のロッカーまで来て漸く一息つく。
それにやや遅れて入ってきた真由はすっごく怒ってた。
つかつかと私の横に来て両肩をがしっと掴んで「伊達政宗はサイテーなのです!ちゃんは家に帰る必要なんてないです!!」って言って、荒々しく着替えて化粧する。
真由が怒ってる理由は多分『夜の相手が欲しくて』って言葉。
私が男に興味がない(BL以外)のは周知の事実だし、まして行きずりの人となんて絶対にないもんね。


苦笑しながら少しだけ気分が浮上した私は、ママが止めるのも聞かずにたくさん飲んで酔いつぶれてた。
酔いからさめた後、皆からお説教食らったけどそれでも代わる代わる心配して理由を聞きに来てくれて。
でも本当のことは皆に言えなくて――流石にママにだけは言って、後は尤もらしい理由をつけて体良く引き下がってもらった。


それからというもの、私の出勤時間を狙って店の前で待ち伏せをするのが多くなって、私もそれに釣られて日に日にアルコール量が多くなっていた。

ちゃん…流石に飲みすぎなのです…」

「んん〜?らぁってぇ、このくらいのまないとぉ〜、やなことばぁっかなんだも〜んv
 そぉでしょぉ〜?らからぁ、みんにゃのんでのんでのみまくっちゃえ〜vv」

私が立ち上がってグラスを高く掲げれば、呼応するように「オ〜!」と叫ぶ声。
そのまま中身を一気飲みし、ぼすんっと座ると店中から拍手喝采が起こる。
私はそれにニコニコ笑いながら各テーブルに向かって手を振っていると、ママが来て時間だからあがるように言われてしまった。
まだ飲んでいたい気分だったけど、時間が来たのならしょうがないわね。
真由も同様に言われたみたいで、2人でロッカーに移動して着替える。
その間に亜由に連絡を取ったみたいで、私は真由に少し支えられつつ店を後にし、待ち合わせの場所近くまで行けば何やら言い争っている声。
そのうちの詰め寄ってる方が気付いたみたいで、私たちの方へ駆け寄ってきた。

「やっと見つけました…って様っ、一体どれだけ飲まれたんですか?!」

「えぇっとぉ〜」

「応えることなんてないからな。それよりも早く帰ろうぜ?」

「亜由の言う通りだ。これ以上言っても不毛なだけだし、答えることも出来ない。」

こじゅぱぱに掴まった私をさらりと引き剥がして、気付いたときにはもう車の中。
隣にはしっかりと真由が座ってていつの間にかロックもかけられて。
亜由がハンドルを握る頃には香奈もシートベルトをし終えてて、いつでも発車準備おっけ〜な状態。
酔った勢いもあって超ハイテンションな私が号令をかければそのまま車は発進した。



様っ!!………全く何とかして話の場を作らないと…」

「…おい小十郎、今のは確か…アイツは遠い親戚じゃなかったか?」

「ま、政宗様!?あ、はい…そうですが…」

「何で『様』をつける必要があるのか説明しろ。」



記憶が曖昧な私はさっき『様』で呼ばれてることに気がつかないでいた。
その場にまさにぃがいたのなんて誰一人として気付かなかったんだから、しょうがないと言えばしょうがないんだけど。





「ママ〜、今日はこの下の部屋借りていい?」

あれから数日。
相変わらず店の前での待ち伏せはあったけど、回数は減っててストレスも以前から大分少なくなってる。
けど、今日は香奈の家も真由たちの家もあがれない用事があって、今ママに頼んでるところ。
だったら一度家に帰ったら?、なんて言われたけど『記憶が戻るまで帰らない』と公言した以上帰るわけにもいかないし。
最初は渋ってたんだけど、私がお願いしたら「今日だけだからね?」ってことで許可してくれた。

「今日はこれだけでよし、と。」

手にぶら下げたバッグの中にはサイフと携帯。
それを手にウキウキと階段を下りてママが借りてる部屋へ行き、鍵を開けて中へ入る。
ドレスを脱いでTシャツに着替え、冷蔵庫から缶ジュースを取り出して飲もうとした瞬間にインターホン。
どうせ間違いだと思って無視し続けたんだけど、鳴り止むことなく寧ろ何度も鳴らしてくる。


―――――まるで私がいることを知っているかのように。
これは…そう、私がまだと一緒に住んでた頃、「家族だ」と言って乗り込んできたあの時と似てるの。
でもそんな2回も同じことがあるわけないでしょ、と思わずに開けたらこじゅぱぱが立ってた。

「所在をお伺いしたら、こちらだと聞いたものですから。」

とこじゅぱぱの腕に抱きしめられる。
それが嬉しいと素直に思うのと、悲しさが一緒にせりあがってくるのは同時で。

「今日はたまたまここになっただけ。明日からはまた違う場所に行くから。」

だって、あの人はまだ―――私のことを思い出してはいないから。



「そうやって、逃げるのか?」



明らかにこじゅぱぱの後ろから聞こえるあの人の声。
来るはずないって思ってた。
私のことなんて、今のまさにぃには只の他人で関係のないことだし。
―――でも、こじゅぱぱがいるんだから、傍にいて普通なのよね。

「……逃げたら悪いわけ?」

最初こそ抵抗してみたけど、こじゅぱぱを振りほどけるわけなくて。
じゃあ口でと思ったら、それはまさにぃに負けるハメになり。
打つ手がなくなって、できることと言えばここから追いだして、鍵を掛けて部屋に閉じこもるってこと。
私は力を込めてこじゅぱぱを突き放し、急いで扉を閉めて鍵を掛ける。


向こう側では私を呼ぶ声と扉を間なしに叩く
来たとき同様しつこいが、今は耳障りにしかならない。

「…って。…2人とも帰って!!」

私がそう叫んだらぴたっとが止んだ。
それから間もなくして「明日、また…」とだけ言って遠ざかる足
それが聞こえなくなってから私は扉を背にしたまま崩れ落ちた。


探してくれたのは本当に嬉しいわ。
でも、今の私には……私の記憶を失くした人と一緒に住む勇気なんてない…
せめて…一欠けらでいい…、昔の…私が覚えていない頃の記憶でもいいから思い出してくれれば…



それだけで一緒にいていいんだって思えるから――――



「…ん……あ、ヤバイ(汗)」

不味い事に私はあのまま玄関先で寝ちゃったみたい。
久しぶりにフルに仕事入れまくって、飲みさくって……あんなことがあれば疲れるわよね。
な〜んて、体調管理しっかりしておかないとママに怒られちゃう!

「早く暖かくしなきゃ…ってここ……なんで!?」

立ち上がろうとして、柔らかい感覚に初めて気付いた。
ついでにきょろきょろと見渡せば、つい最近までいた私の部屋。

「何で?…鍵もかけてあったのに、何で私ここにいるの?」

服はそのままだったけど、場所は間違いなく帰らないと公言した家の私の部屋。
何とかしてここを出なきゃって思ってたら、コンコンとがしてドアが開く。

「申し訳ないとは思いましたが、政宗様がどうしてもと仰られたので。」

「こじゅぱぱ…私はこじゅぱぱともまさにぃとも話すことなんてないよ?」

「前にも言いましたが、様にはなくとも我々にはあるのです。
 一度話し合いの場を設けなければと思っていたのですが、今が丁度宜しいようですね。」

こと、と置かれたマグカップ。
湯気の立つそれにはホットミルクが入ってて、甘い香りが鼻をくすぐっていく。

「こちらを飲んで落ち着かれたら、リビングにいらしてください。」

では、とこじゅぱぱは部屋を出て行って、部屋には私1人。
置かれたマグカップを取ってちびちびと飲んだミルクは、その温かさに比例して安心させてくれる。
まさにぃに私の記憶が戻ってないのは残念だけど、また1から知ってもらえばいいんだよね。
大丈夫。前みたいな生活に戻れるって信じてるから。



「今度は逃げずに来たみたいだな」

リビングのドアを開けて開口一番がこれ。
ちょっとむっときたけど、それを無視してマグカップを持ったまま、空いてる椅子に座る。

「で?話って?」

「お前がオレの親戚筋なら、どうしてオレが覚えてないかってことだ。」

「そりゃ遠い遠い親戚だもん。本家の会合に呼ばれなくて、知らないって事も普通なんじゃない?」

仕事のこともあるし、近くの時計を気にしつつ慎重に言葉を選ぶ。
その後も色々と私の事聞いてくるけど、それをのらりくらりとかわしていたら。

「じゃあ何でお前は『様』と呼ばれてるんだ?」

私は思わずぴくっとなった。
何でその呼び方を知ってるのかって思ったから。
ちらっとこじゅぱぱを見たら『すみません…』って目線。
私は全然呼ばれた記憶なんてないし……って、もしかして記憶ないときに呼ばれた?

「それに小十郎は自分より立場が上の者にしか敬語は使わねぇ。」

うっ…それを言われると、どう反論しようか困るわ…。

「だから…お前は遠い親戚なんかじゃなくて、逆にオレに近しい人間………違うか?」

た、確かに『異母兄妹』だけど…存在は近しいけど…

「………………違うもん………」

記憶のない人に「私が腹違いの妹です」なんて、世の中が信じないこと言えるわけないでしょ?

「違わねぇ。…お前はオレに近しい人間、いや妹…だ。それも腹違いの。」

その情報、こじゅぱぱに教えてもらったことでしょ?

「それで?」

「お前がここに来るまでは、母親と2人暮らし。
 ボロアパートの桜花荘に住んでて、2年前にお前と隣に住んでるの家にトラックが突っ込んで、母親との祖父母は即死。」

そこまで言われて、思い出すのは霊安室。
布越しに分かるあのいびつな形と、それに似合わず幸せそうに微笑んで眠る母さん。
あれは今でも鮮明に思い出せて、知らず嗚咽が出てくる。

「葬儀じゃ喪主もして、生活は気丈に振舞って。
 オレたちは何とかお前を探して手を回して一緒に住んで、お前の色んな面を知って。
 まぁ普通よりちょっとズレてるところもあるが、それだってお前の1つの部分だしな。
 けど、……あの事故でお前のことだけ抜けて、覚えてなかったとはいえ、仕事についてあんなことも言ったし………」

「政宗様、それまでにしておかれては…?」

「…あぁ、そうだな。」

嗚咽は既に酷くなっていて、目は潤んで景色がぼやけて見えていた視界がふっと暗くなる。
これって、何となく……ううん、絶対――



「今まで忘れちまってて悪かった。心配させたな……。」



ぎゅっと…でも優しく抱きしめられて。
思い出してくれただけで嬉しいのに、私の記憶がなかった頃のあの言葉の反省なんて要らないのに…
嬉しくて…、嬉しくて涙が止まらない。





「けど、八つ当たるにしても酒の飲みすぎはいけないと思わないか?」


ころっと変わった声
それは「次はお前の反省の番だな」ってこと。
気付いた私は腕の中で暴れるけど、上手く抱き込まれてて逃げ出すことは叶わず。
その間に察しのいいこじゅぱぱが店に電話をかけて、「反省してくださいね」って目を向けてくる。

「他人を巻き込むような迷惑かけてないでしょっ!?」

「ほぉ?友人や同僚を巻き込んでか?」

「そ、それは……じゃ何に当たればよかったのよっ!」

「飲むなとはいわないが、…溺れない程度にしろ。」

「あの状態でできるわけ…いっ痛いっ!いひゃいっひぇばっ!!」

抗議すれば両頬をつままれて。
離されて頬をさすれば、「これにこりて、仕事は入れないこった」とだけ言ってニヤリと笑うの。
流石にこんなことされて、私だって黙っちゃいないわよ?

「こんなだったら、もう暫く帰ってこないから!!」

「Ah?何言ってんだ?の家はここだろ?」

「男2人で楽しく過ごせばいいじゃない。私、もう少し1人暮らしを堪能してくるから!」

バッグを取りに行こうと背を向ければ、「ちゃんと帰ってこいよ。」と言われ。
それ言われたら、帰ってこないわけにいかないじゃない?

「だけどもう…あんな気持ちはヤだからね?」



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