今日でこのアパートとも御別れ。
何ヶ月っていう短い期間だったけど、とても楽しかったよ。
香奈も真由も亜由も、私についてきてくれるって言ってたから、新しい街でも頑張ります!
母さん……私がちゃんと暮らしていけるか、上からしっかり見ていてね?



僕らの住む街―The Reckless GIRL & Unfortunate BOYS―
〜皆との別れ〜



今日は卒業式。
3年間通ったこの学校とも今日のこの式で終わりなのよね。





っ!今日でこの街から離れるって本当なの!?」

朝登校した瞬間に一気にクラスメートに囲まれる私。
どこからそんな情報が漏れたのやらと思う暇もなく、皆私に抱きついてくる。
中にはちょっと苦しい人のもあったけどね。

「まーね。ほらうち母子家庭だったのが、事故で母さん亡くなっちゃったでしょ?
 で、と2人暮らししてたんだけど、向こうは親戚の人が引き取ってくれることになってさ。
 『1人暮らしだ〜v』なんて浸ってたら、私のとこにも『家族だ』って言う人が来てさ。
 私がまだ納得してないままに戸籍とか色々纏められちゃってねぇ…」

大袈裟に溜息をついて、私はここから離れたくないと意思表示するけど……

「でも、カッコいいんでしょ?」

「……見た目はね。」

政宗さんに上手く口車に乗せられて家族なっちゃった、なんて言えやしないわよ……
あぁもう!あの人を食ったような笑い、二度と見ることないと思ってたのにっ!

っていうか、よねっ!
私がいくら暴走腐女子だからって、「誰かの監視があった方がいい」ですって!?
私は幼稚園児じゃないのよ?!純粋な心でここまで育ってきただけであって、それが普通の人と違う方向に向いちゃっただけで!
んもう……あの時のことを思う出すだけで失礼しちゃうわっっ!

「いーなぁ…あたしもカッコイイ人と一緒に住みたいなぁ…」

は今も昔もカッコイイ人が傍にいるから、あんたがそんな願望言っても通じないって!」

「えぇ〜?でもだってカッコイイと思う人はいくらでもいるでしょ?」

まぁ確かにいるにはいるわね。
でも、あの政宗さんはカッコイイ部類には入るけど、とんだ食わせ者よ!
あんな人と兄妹だなんて……母さん、どうしてもっとマシな人としてくれなかったのよぉ…


「はいはい、お喋りはそこまでにして席についてちょうだい。」


いつの間にチャイムが鳴ったんだろう?
教卓には既に担任がいて、私たちに席につくよう声を掛けている。
皆はまだ聞き足りないのか、なかなか離れようとはしなかったけど、式に遅れるという担任の言葉で渋々ながら席についていった。


それから、式の大体の流れの確認や注意事項を確認して私たちは列を成して体育館に向かった。
道中、何やら『黒い眼帯のカッコイイ人』なんていう不穏な言葉が聞かれたけど……き、気のせいよ、うん。
あっちだって私と同じ高校生なんだし、ましてあっちは今日学校だって言ってたし。
父さんだって来るわけないし(社長で忙しいんだから来るわけないわよ)、来るとすれば片倉さんだけのはず。



でも……そんなときの予感ほど的中するものだって、誰かが言ってたような気がする………

ちゃん…やっぱりいるのかもです〜……」

「これだけの騒ぎだ。アイツ、ぜってぇ来てる。」

横で真由、後ろで亜由が私を気遣ってくれる。
香奈も当然この状態にピリピリしてるんだろうなぁって思う。(香奈は結構後ろの方にいるから分からないのよ。)
3人に最初話をしたら、次の日には「顔覚えてきたのです〜」って真由がにっこり笑ってたから。
………恐るべし、3人の情報力ね♪

「だってあっちだって高3よ!?他校の卒業式なんて普通来ないって!」

…そう、普通は卒業生であってもこないわよ!?
これであの場にいたら、本当のシスコンよ?!
もし見つけたら『他校で学生のクセに、何でここにいるのよっ!このシスコンっ!!』って叫んでやるんだから!!



なんてことを考えながら、式場である体育館に『卒業生、入場』の声の後に入れば。



『何で!?何で他校生でしかも3年生のクセに、ここにいるのよぉっ!!』(あくまで心の声)



思わず移した保護者席。
そこにいる片倉さんと……片方に黒の眼帯をつけた……例の人。
とっさにさっきの言葉を言いそうになったんだけど、真由に口を塞がれて叫べなかったのよ。
…おかげで恥はかかずにすんだけど。

「……いたね。」

席について隣にいた真由がそう言う。
うんざりした私の顔なんて自分が一番よく分かってる。
今の顔は誰がどう見ても不細工で近寄りがたい雰囲気を出してると思う。
現に、真由とは反対に位置する人はビクビクしてるもの。

「ずぅぇぇぇぇっったい!シスコンって言ってやるんだから!!」

先生達に見えないように小さくグーを作ってみる。
真由は苦笑しながらも「いけいけです〜」と応援(?)してくれる。
そんな真由の隣では亜由が溜息をついてたけど、もう誰の手にも負えないからv
式での校長や来賓の話なんてそっちのけで、私の脳内では政宗さんをどうやってからかってやろうかとそんな楽しいことを考えてた。





でもって、退屈な式も終わって退場して。
それぞれ自分たちのクラスに戻って、担任からのありがたい(棒読み)話も聞いていざ外へ。
皆と積もる話してる最中だってのに―――


、Time limitだ!行くぜ?」


このシスコン馬鹿兄!
何で邪魔してくれるのよっっ!!

「ちょっとっ!私まだ話する人たくさんいるのよ?それを邪魔するなんて普通ないわよ!?」

「ですが、一度輝宗様にも御会いして頂かないと…」

「それってどうしても今日じゃなきゃいけないわけ?!別の日に時間作ればいいでしょっ!」

「ったく……聞き分けのねぇSisterだ…」

「お生憎様。人の邪魔をするような人を家族に持った覚えないから………この
シスコン!!

「ほぉ…?小十郎、今すぐコイツを車に乗せろ。」

流石に効いたのかしら?
片倉さんに命令して、自分はさっさと車に乗り込んだかと思うと、私の肩に回される手。

「はっ!……様、これ以上は時間を無駄には出来ません。早く乗って下さい。」

それでも動こうとしない私を片倉さんは「失礼します」と言って抱き上げて、私を無理やり車に乗せた。
ちょ、ちょっと!私まだ話したいことたくさんあるって言ってるでしょぉぉぉ(泣)
無情にもドアを閉められて、開けようと頑張ったんだけど開かないのよ!
いつの間にチャイルドロックなんてしたのよっっ!!


「あー…あれじゃあもう今日は無理だな。」

「確かに。…、また明日。」

ちゃ〜ん!後で電話するです〜」


必死に窓を叩く私の健闘も空しく発進する車。
それを香奈たちはじ〜っと眺めてるだけで、助けてくれる様子なんて全くなくて。
こ、この薄情者ぉ〜っっ!!









「そろそろ機嫌直したらどうだ?」

新しい家に向かって走行中の車の中。
話を中断されて超ご機嫌斜めの私に政宗さんが声をかける。
誰が機嫌を直すもんですかっ!今日があの街で過ごす最後の日だっていうのに、話の途中で無理やりこれに乗せられてるんだから!

「……………………………」

そっぽを向いてまだ不機嫌だってことを態度で示す。
もう学校からは遠く離れちゃったけど、それでも私はまだ未練たらたら。
新しい街でもやっていける自信はあるけど…………………だから会えなくなる友達とはもうちょっと話したかった。

「そうでした!家に行く前に会社に来るよう輝宗様に言われていたのを忘れておりました!」



「「はぁぁ!?」」



片倉さん……運転しながら思いださないで!
そんなこんなで、車の進む方向は新しく住む家から、伊達コンツェルンへ変更。
母さん、どうして私はこんな破天荒な人生を送ってるんでしょーか…?



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