あれから2日後に来た彼らは、『これからは一緒に暮らすんだ』と言いました。
僕らの住む街―The Reckless GIRL & Unfortunate BOYS―
〜私、まだ納得してないんだけど?〜
「……今、何と仰いまして?」
私に家族があると分かってから2日後。
再度この2人がやってきました。
「だから、これからは一緒に暮らす、と言ったんだ。You see ?」
「異論はありませんね?」
や、私OKしてないし、勝手に決められても困るんだけど(汗)
呆気にとられた私をそのままに、片倉さんと政宗さんはとんとん拍子で進めていく。
そして受験シーズンにさしかかった頃、いつの間にかとも話をつけてくれちゃって。
結局この慣れ親しんだ街を離れるのは、卒業式の日ってことになったんだけど。
「大学なんて行かないわよ?」
新たな問題浮上です。
「これから社長令嬢になるんだ。universityくらい行かねぇと伊達家の名折れなんだが?」
いや、私家族がいるって判明しただけで、別に伊達に入る気もないし、まして大学なんて行く気もないし。
「そんなこと言われても……もう私働いてるし。」
そう…、私はまだママのところでホステスとして働いている。
指名もかなりつくようになって、割と引っ張りだこだったりするんだなコレがv
だから最初の頃に比べて、家に帰る時間は格段に遅くなっていて、を心配させていることも重々に承知はしていたけど。
「夜の…ホステスの仕事でしょう?辞めるわけにはいかないんですか?」
片倉さんが何で私の仕事を知っているのかとビックリしたけど、私の事を調べたんだから知ってて当たり前か。
けど政宗さんは知らなかったみたいで、すごい顔して捲し立ててた。
「それは……私とがここまで生きてこられたのも、ママが私に仕事をくれたからだし…私も指名ついてるし、簡単には辞められないわ…」
俯いてぎゅっと膝の上で手を握れば、ちっと舌打ちをする音が聞こえて。
私は申し訳ないと思いつつも、ここで『辞める』とは言えなかった。
「なら……少しずつでいいから、出勤回数を減らせ。」
政宗さんからの最高の譲歩。
最終的には辞めろってことなんだろうけど、それでもここまで譲歩してもらえたことが嬉しかった。
「分かった………ありがとう…。」
目頭が熱くなって、次から次から涙が溢れてくる。
止めようと思っても全然止まらなくて、でも顔を上げて言わなきゃって思ってもう1回「ありがとう」って言ったら…
「無理して笑って礼の言葉言われてもな…」
気付けば私の目の前には政宗さんの顔。
そしてちょっとずれたかと思うと、額に柔らかい感触が来て。
それが唇でキスされたって事に気付くまでにかなり時間かかったけど、……涙は止まっていた。
「それでも…言わなきゃって……思ったから。」
目をありったけ擦って、腫れた目だけど精一杯笑ってみれば、今度はすっぽりと抱きつかれた。
もう苦しい顔も思いもさせたくないといわんばかりに……ぎゅっと抱きしめられて……
私はそれが何だか嬉しくて、また涙を流して泣いてしまった。
今まで『私が頑張ってを養うわv』と心配させないように、明るく振舞って、常に気を張って頑張ってきたけど……
それが正直辛いと思うこともあった。
けど、それが私たちの選んだ道で、進んできた道。
そしてこれからもこの道を進んでいくんだと思っていたのに、兄だ家族だとやってきて。
それだけでもビックリなのに、もう心配しなくていいと気付かされて。
「あ、りが…と…っ……ホントは…辛かった、の……誰に…も言え、なくて……」
嗚咽交じりの言葉は聞き取りにくかったかもしれないけど、私が伝えたかったことは言った。
それから私は久しぶりに思い切り泣いた。
もう一生分の涙を使い果たすほど泣いて、涙が出なくなってもまだ泣いて。
情けないけど泣き疲れて眠ってしまった私が目を覚ましたのは、あの人たちが帰った後で、傍にはがいた。
「…、大丈夫か?」
私の顔を覗き込む。
それに「もう大丈夫〜」と笑って答えたけど、は真正面に来て私に抱きつく。
ちょっとビックリはしたけど、がこうやって態度に出すなんてこと滅多にないから、私も思いっきり抱き返した。
「無理するな……一緒に生きていこうって、そう約束しただろ?」
「そう……だったわね。でも、は前田さんの家に行くんでしょ?私は…遠い街で1人でも大丈夫。」
母さんの遺体を目の前にして、の前で大泣きした私が言えることじゃないけど。
…それでも、私は家族を知って一緒に住んで、また亡くして悲しくて寂しい思いをするのは嫌だった。
それならば1人で生きていった方が、辛くても悲しい思いをしなくていいと判断したから。
結局のところ、私も新しいところに行くことになっちゃった(しかも私の意見は無視)しね。
「嘘付け……だったら、何で泣いてるんだよ…」
…知らないうちに私はまた泣いて、の服を濡らしてたみたい。
さっきので涙なんて尽きたと思ってたのにね?
「違うわよ…!これ、は…っ…の行き先が…決まって、嬉しい…涙……なんだからぁ…!」
必死に誤魔化しても通じない嘘だって分かってる。
今生の別れになるかもしれないし、ならないかもしれない。
どっちにしてもと別れることになるのだから、今のうちに泣けるだけ泣いておかなければ……
もう…泣く暇もなくなるんだから……
「…今はその嘘に騙されてやるよ……」
その日の仕事は休んで、久しぶりのゆったりした時間を過ごした。
後日、ママには事情を話して少しだけ時間と日数を減らしてもらった。
その分給料は少なくなるけど致し方ないわよね。
そしてその開いた日を狙って政宗さんたちが来て、荷物や戸籍などの書類関係に追われて。
結局は私が納得しないまま、大学や同居も決まって……その家というのがこれまたここから遠くて。
でも……お隣が前田家だって聞いて、私は安心した。
『と離れなくて済むんだ…も来るって言ってたし………』
1人で知らない街に行くのかと思って、すごく心苦しかったんだけどさ。
隣にはもいるし、近くにはも住むって言ってた。
……それにもっと嬉しかったのは、香奈たちが一緒の大学を専行してくれたの!
香奈は最初違う大学だって言ってたし、亜由は専門学校だって言ってたんだけど、私が行かされる学校聞いたら、何でか変更してくれた。
えへっ…友達冥利に尽きるというか、皆に大事にされてるっていうか…
母さんが亡くなった後に、こんな幸せがあっていいのかって思うけど、でもそれが私の人生だってんなら受け入れてあげるわ!
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