血の絆などもうないと思っていた。



僕らの住む街―The Reckless GIRL & Unfortunate BOYS―
=彼らがここにいる理由B=



じーちゃん達が死んでから数ヶ月。
俺はと一緒になんとかこの街で生きていた。


『ガキ同士でも寄り添えば…それなりに生きれると思わないか?』


あの日、にそう言ったのは俺で。
それは本心だったけど、それは簡単な事ではなく最初は結構揉めた。
雫さんはどこから訳有で流れてきた人で過去や自分の血縁者の話はにすらしてない人だったし、俺もそうだった。
俺の両親は所謂『駆け落ち』でお袋の方の家族とは絶縁状態だったし、じーちゃんたちは戦争時に天涯孤独になった人達だった。
文字通り引取り手のない俺たちに児童福祉施設とか言うところの人達がやって来て施設に入るように勧めに来たりもした。
それをどうにか拒否しても今度は住む場所や生活費などの問題が出てくる。
俺たちはそれを一つ一つクリアす事から始めた。


『とりあえず家は…どっかアパート借りるわね。』


そう言って住処はが謎のつてを使って用意した。
お世辞でも綺麗とは言えず、むしろ桜花荘よりランクは下だがこの際我侭は言わない。
そもそも中学生と高校生の子供だけで部屋を借りれただけで奇跡なのに台所も風呂も小さいけどあったしそれだけで御の字と言えるだろう。
学費は俺は特待生だから最低限の事しかないが、はそうは行かず話し合ってあの事故の保険を当てる事にした。
じーちゃんも雫さんも俺達に貯金を残してくれていたけれど、俺ももそれには手を付けたくはなかったからだ。
でも、そうは言っても生きる事に金は掛かるわけで働かなければならないが俺もも未成年。
とりあえずお互い知人のつてを頼る事にしたのだが…


「まさか、の奴が水商売行くとは……」


が持ってきた仕事は雫さんと同じホステスだった。
なんでも通夜の時に雫さんの知り合いのママさんに声をかけられたらしいが高校生がいいのやら。
だが、当の本人は昔に雫さんと一緒に職場に行ってた時に仕事を見てたからか結構上手くやってるらしい。
毎日夜遅くに酒臭い状態で帰ってくる姿は生前の雫さんとそっくりだった(さすが親子)
次の日の朝、へろへろなもんだから学校どうよと思うがきちんと卒業すれば言いとが思ってるのであえて突っ込まない事にしている。
そして、高校生のより働き口のない中学生の俺だが…



!向こうのテーブルの皿を下げてくれ!」
「はい!」

当然働いている。



は『私が頑張ってを養うわv』とか言ってたが一人で背負わす気はない。
中学生だろうが年下だろうが働き口があるなら働くべきだと思い俺に働く事にした。
一つは定番の新聞配達で賃金は安いが、俺は自転車で結構移動できるタイプだから意外にどうにかなってる。
それでもう一つは…なんと
"河村寿司"だった。


(…タカにはほんと感謝だよな。)


さすがに新聞配達のみだと少し少なすぎる。
かと言って、中学生を雇ってくれるなんてある訳もなく途方にくれている時に助けてくれたのがタカだった。
最初は俺は結構料理とか家事とか得意だからタカのおじさんのつてで飲食店の雑用で雇ってくれる所がないか聞いて欲しいと聞いたのだが。
すると、タカはだったらおじさんに頼むから家で働けば言いといってくれ叔父さんも了承してくれたのだ。
仕事は主に雑用や席の後片付けにセッティング、たまに寿司意外の料理の下ごしらえも手伝う。
時間は、学校が終わってから7時ぐらいなんて良い条件だ。


!そろそろ時間だから上がってくれ!」
「はい!ありがとうございました!」


そして、今日も7時になり仕事終了。
早く買い物にいかないとと思い着替えているとタカに声をかけられた。
その手には少し大きめの紙袋。


、母さんがこれ持って行っていいって。」
「え?またか?そんな気にしなくてもいいってって言ってるだろ?」
「いや、どうせ余り物なんだからこっちこそ気にしないでよ。」


タカやタカの家族はこうやって何かと俺にあまり物を持たせてくれる。
申し訳ないと言う思いはちゃんとあるが、それでも助かっているのも事実で…
俺は少し迷った後その袋を受け取った。


「タカ…ありがとな。」
「いいんだって。本当に気にしないでよ。」


こう言うとき、ほんとに周りに支えられてると思う。
二人で暮して行こうとは思ったけど、タカや周りの協力がなければ絶対無理だった。
どんなに強がろうと、結局は俺もも単体なら何の力も持たぬ子供なのだから。
そう考えると俺達は酷く恵まれている。


「それより早く行かないとタイムセール終わっちゃうよ?」
「…ほんとにありがとな。タカ。」
「だから、気にしないでって。また明日、学校でね。」
「あぁ、また明日。」


親はいないじーちゃん達も死んでしまった。
それでも、周りにこんなに優しい人達がいるってことはかなりラッキーだ。
これならやっていけるかと思い出した頃に彼女は現れた。


「申し訳ありません。貴方が如月君ですか?」
「え?……お姉さん誰?」


河村寿司からの帰り道。
スーパーに向かって自転車を漕ぐ俺の隣スッと来た一台の…ベンツ。
後ろの席の窓が開いたかと思えば呼ばれ名前に驚いて止まると、車も止まる。
俺の名を呼んだ相手を見てみるが…どう見ても知らない女の人だった。
思わず眉を寄せるが、女の人は気にしてないのかニコニコと笑っている。


「私、前田まつと申します。よしなに。」
「はぁ…」


挨拶されるが名前も聞き覚えがない。
いったいなんなんだろうと思っていると突然反対側の車の扉が開いた。


「少し、お話したいことがありますの。乗っていただけませんか?」
「は?」


あくまで友好的な態度で乗車を勧められるが…無理だろ?
今時の小学生でも知らない人の車に載っちゃいけないことぐらいわかるぞ。
例え、見た目が綺麗でやさしそうな女の人でも一緒と言うか逆に一見そうだからこっちのが怖い気がする。
優しげな微笑だけどなにを考えてるかまでは本人にしかわからないんだ。
そうなれば…



「………っ!!!」
「あっ!お待ちなさい!」

―当然、逃亡だろ?



大人しく車に乗るなんて危険行為をするわけがない。
俺はそのままチャリに乗り直すと、そのままその車を置いて突っ走る。
行き先は少し先にある商店街のアーケード通りであそこは車は立ち入り禁止だし狭い。
相手はベンツ、絶対におって凝れないだろう。



「あら!?これは…」
「おっ?(諦めるか?)」

と、思ってたんだが…





「行け!次郎丸!」
「はぁぁあっ!?」

突っ込んできたよ!!





細い道をものともせず突っ込んでくるベンツ。
店の前におかれた箱や看板をなぎ倒し、俺の後を追ってくる。
器物破壊で犯罪だろって言うか、
次郎丸って誰だ!?運転手か!?
これで捕まったらどうするんだよ!次郎丸さんかわいそうだろ!
って言うか、
次郎丸さんも実行するなよ!


「お待ちになってくださいませ!」


そんな俺の心の声などこれっぽっちもわからないんだろう。
可愛らしい声で女の人は、窓から
箱乗りで身を乗り出し俺に向かって叫んでいる。
見た目お嬢様っぽいけど実は族出身か?実はそうなのか?
…混乱して変なこと考えてるな俺。


「待たない!って言うか、うち貧乏だから誘拐しても利益になんないにから!」
「なっ!私の目的は誘拐ではありませぬ!」
「じゃ、なんなんだよ!」


誘拐では一応ないらしい(まぁ、誘拐なら派手すぎるが)
じゃ、俺を捕まえたい理由はなんなのかがさっぱりわからない。
そんな思いを込めて怒鳴ったらふと女の人は動きを止めた・



「あら、申し訳ありません。先に言うべきですわね。」

そして、あまり申し訳なさそうに一度謝ると…





「私は、貴方の母親の妹。つまりは貴方の叔母ですわv」

とんでもない爆弾を落としてくれた。





「はぁっ!?」
「顔立ち少し似てません?」


そう言って、彼女は…まつさんは微笑む。
その顔は写真で見た母さんとどこか似ていて、妹と言う言葉に妙に納得する。
不思議に嘘だとかは思わなかった。


「…叔母…さん?」
「はい、そうでございます。」


問い返せば返って来る肯定。
詳しい事は良くわからないが、まつさんは一応俺の叔母らしい。
つまり話があるってのはその事だったんだろうけどさ。


「…そう言うのはもっと先に言おうよ。」


言ってくれればあそこまで逃げなかったのに…
って言うか、商店街をあんなふうに犠牲にせずにすんだのに…
もう二度とあそこいけねぇよ(行き付けの店あるのに)


「あらあら、申し訳ありません。てっきり言ったと思っていて…」
「言ってない。」


思わず自転車を止めて項垂れれば少しノー天気な感じのまつさんの声。
色々突っ込みたいところは合ったが、まつさんは突っ込んでも流しそうな人なので止めた(商店街に車突っ込ませる人だし)
つうか、見れば見るほど写真の母さんを思い出す。


「……とにかく、うちで話しましょうか…叔母さん。狭くて汚いけどさ。」


両親はもういないし育ててくれたじーちゃん達も死んだ。
親戚なんて知らないし、これからも知らないままで生きていくのだと漠然と思っていた。
でも、ここで突然現れた叔母と言う存在。



やけに心がざわめくのは血のせいだろうか?



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