それは突然の事だった。
僕らの住む街―The Reckless GIRL & Unfortunate BOYS―
=彼らがここにいる理由@=
俺の育った町は極普通の街だ。
一応都会ではあるがきらめしくもなく騒がし過ぎもしない。
そこで俺は祖父母と三人でアパート暮らしをしている。
「じゃ、行ってくるよ。ばーちゃん。じーちゃん。」
「はい、いってらっしゃい。」
「車に気をつけるんじゃよ。」
「いや、そこまで子供じゃ…とにかく行って来る。」
両親は…いない。
何でも俺が小さい時に両方とも事故で他界したらしい。
だから、俺は両親の顔を写真でしか知らない。
「あ、。おはよう。今日も可愛いわv」
「おはよう。。誰が可愛い…って、何でお前まだパジャマなんだ?」
「いやんv乙女の秘密に触れちゃいやよv」
「変な声出すな。どうせ、また変な本読んで寝坊しただけだろ?」
「まぁ、私って腐ってるからv」
「褒めてねぇよ。」
で、こいつは二つ年上の幼馴染の。
一応女だが本人曰く『腐女子』で怪しい趣味オンパレードの一応女子高生。
ちなみにお袋さんと二人暮しだが、お袋さんは夜の仕事だから今頃奥で寝てるんだろう。
もう普通なら出なきゃならない時間なのに未だにパジャマな所を見るとまだ寝てたらしい。
最早趣味については仕方ないが、日常生活に影響出すなと言いたい。
「一応飯用意してあるから、ばーちゃんにでも暖めてもらえ。」
「ほんと!?毎日ありがとーvならきっとカッコいいダーリンの可愛らしいお嫁さんに…」
「なりたくねぇよ!」
―ついでに人を男と脳内でくっつけるなとも。
「じゃ、とにかく学校にはちゃんと行け。」
「はいはい、わかりましたよ。」
やる気のないに釘を刺して、俺は今度こそ学校に向かう。
なんか学校行く前から疲れたというか…まぁ、毎日の事だからしかたねぇか。
………これが毎日ってなんかやな日常だな。
「…学校行くか。」
家を出て自転車で5分程度、すぐに学校に着く。
ちなみに名前は『青春学園』…はこの名前を見たとき笑いすぎで窒息しかけていた。
そんなふざけた名前の学園だが一応私立で結構有名(名前以外の点でもな)
こんな学費が高そうな所になぜ俺が通っているかと言えば家が近くて特待生制度があるって事だ。
ただでさえ俺に金が掛かるのは確実で、正直じーちゃん達にこれ以上負担はかけたくなかった。
それで一番家から近くて何とか特待生になれそうなここを選んだ。
「あ、。おはよ〜んv」
「あ、菊に秀かおはよう。朝練終わったのか?」
「おはよう。。そうだよ。今日はは一緒じゃないのか?」
「は今日は飼育当番でもっと早く行ってるよ。」
かと言って、それが辛いかと言えば違って。
仲の良いダチも出来たし、昔から気心知れた親友も一緒に通ってる。
立場を維持するのは結構大変だが、やれば何とか出来るもんだ。
「じゃ、教室行くわ。」
「あ!!後で今日の数学の宿題見せて欲しいにゃ!」
「…またか、菊…解き方教えてやるから自力でやれ。」
「えぇー!見せてくれた方が早いじゃん!」
「ダメ。それじゃ、菊がわからないだろ。」
学校は騒がしいが結構楽しくて。
ダチとバカみたいに騒いだりするのも実は結構好き。
…面倒事はパスしたいけどな。
「でも、教えるんだ…まったく、は菊に甘いね(くすっ)」
「っ!?…はよっ、不二…行き成り出てくるな。びびる。」
「おはよう。そういうつもりはなかったんだけどびっくりさせたならごめん。」
「まぁ、いいけど…あ、これ桃に渡しといてくれるか?この間言ってった差し入れ。」
「…また?」
「頼まれたかなら。で、こっちがリョーマ希望の茶碗蒸しでこれがテニス部当ての差し入れで…」
「ごめん。訂正…はみんなに甘いよ(呆)」
「…ほっとけ。 じゃ、俺は教室行くわ。」
「それじゃ、また後でね。」
普通でそれなりに楽しい日常。
大変な事も多いけどそれはそれで結構悪くはなくて…
「あ、。おはよう。仕事終わったのか?」
「おはよ。…うん…終わった。(こくり)」
「そっか、そういや今日の数学って何時間目だっけ?」
「…一時間目。」
「げっ……菊の奴絶対間に合わない。」
「え?」
「ひ、〜!すぐにプリント見せて〜!!!(涙)」
「菊…(溜息)」
まったく不満がないなんて言わないけれど。
それでも結構そんな毎日を楽しんでいる自分がいた。
「…で、結局こうなるわけだね。」
「うわ〜ん!こんなに課題出来ない〜!〜!(涙)」(結局、間に合わなかった)
「はいはい、一緒に解いてやるから泣くな。」
「…答え教えて…「は、だめだ。」
「…ケチ……」
「…教えるのも止めるぞ?」
「ごめんなさい!」
だからさ…
俺は考えもしなかったんだ。
「!如月はいるかい!?」
「…スミレ先生?」
そんな日常が…
「あんたの祖父母さんが!― ―」
「え?」
一瞬で変わってしまうことがあるだなんて…
一時間目終わって、結局間に合わなかった菊の課題教えてて。
そこに血相変えて飛び込んできたスミレ先生が言った言葉におれの頭は真っ白になって。
気がつけば俺は走り出していた。
「!」
「うわっ!?!?」
そのまま自転車漕いで向かったのは近くの高校。
突然の中学生の乱入に驚く周りに構わず真っ直ぐ向かうはの教室。
話で聴いた記憶を頼りに階段駆け上がりクラスの扉を開けば、は驚いた顔で振り向いた。
自習中らしくダチと話していたのを切り替え慌ててこっちに近づいてくる。
(つうか、自習中だからってゲームしてるはテレビ見てるわ凄い光景だった)
「、いったいどうしたの…」
「…が… …された。」
「はっ?」
全速失踪だったせいか喉が渇いて痛い。
言いたい言葉は荒い息のせいで上手く声にならずただ痛みを強くする。
それでも何とか言葉にしようとするけれど息が上手く出来ない息苦しい。
そんな俺の姿は滑稽で情けなくて…
『午前9時26分頃、都内○○地区のアパート桜花荘にトラックが突っ込み…』
結局、伝えられたかった言葉を口に出す事も出来やしない。
淡々と語るアナウンサーの後ろに見えるのは壊れた我が家。
今朝、家を出る時は確かにあったはずのそこは今は半分瓦礫と化している。
俺達の部屋との部屋なんてちょうど車が埋まってる場所だ。
『はい、いってらっしゃい。』
なぁ、ばーちゃん。
俺はどこに帰れば「ただいま」を言える?
『車に気をつけるんじゃよ。』
なぁ、じーちゃん。
車に気をつけなきゃらならないのはじーちゃんだったよ。
『この事故で102号室に住む如月幸造さん(78)とその妻美津さん(74)と103号室に住む砂城雫さん(32)が死亡。』
日常が足元から崩れる感じがした。
それは突然で…
失った者はあまりに大きすぎた。
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